番犬の防御力に物足りなさを感じているあなたへ
番犬、という存在がいます。訪問者を威嚇したり、家人に来訪を告げる役が与えられたイヌのことですが、私は「イヌでは弱い」と常々思っています。我が家にも獰猛度の高い中型犬がおり、彼女は訪問者に吠えるには吠えるのですが、ひとたびジャーキーなどを与えられようものなら、即座に尻尾を振ってヘッヘヘッヘと愛想を振りまく始末。
いつなんどき不審者が現れるか分からない現代社会において、「うちはイヌが番してるから大丈夫」と安心していると、すぐに付け込まれ、大切なものを奪われてしまいかねません。
そこで今回は、番犬の防御力に物足りなさを感じていらっしゃる方のために、イヌよりも家の番に適した動物を厳選して紹介します。
1.タスマニアデビル
もうこれは名前のインパクトがすごい。玄関の『猛犬注意』のステッカーをいますぐ剥がして『タスマニアデビル注意』にするだけで効果てきめんです。
タスマニア、というのはオーストラリア大陸の南にある島の名前で、そこに生息するデビルのような生物、という意味でこの名前が付けられたそうです。さらっと「デビルのような生物」と書きましたが、全身真っ黒な体毛の中、胸の位置にだけ一本の筋のように白い毛を生やした姿は悪魔を彷彿とさせます。Wikipediaには
家禽や家畜を襲う害獣として、また鳴き声や死体を漁る姿を悪魔に例えて忌避した。
とありますが、例えば、これがシーズーのような見た目ならば、甲高い鳴き声を発しながら死体を漁っていたとしても、『デビル』と名付けることはなかったと思います。やはり見た目のデビルさが人々に恐れを抱かせたのでしょう。
By No Dust
ちなみに、このタスマニアデビルはここ十数年間で約半数の個体が死滅しており、現在、絶滅の危機に瀕しています。ある病気が原因なのですが、それというのが『デビル顔面腫瘍性疾患』。ブラックジャックに出てきそうな病名です。もちろん、デビルの顔面に腫瘍ができる疾患、という意味ですが、私ははじめ『デビル顔面』だと思い、「それはいかにも悪魔的だな」などと一人で納得していました。とはいえ、画像検索していただければわかりますが、完全に閲覧注意案件です。平時でも悪魔を彷彿とさせるのに、『デビル顔面』になったタスマニアデビルの姿は、完全に悪魔のそれです。
ここまでくるともはや番犬の域を超えており、せっかくお急ぎ便で注文した品を届けに来てくれた宅配便の兄ちゃんも、断末魔に限りなく近い叫び声を残して逃げ帰ることでしょう。
2.マーコール
あまり馴染みがない名前ですね。もし玄関に『マーコール注意』と書いてあると、「マーコール…?なんだマーコールって…」と思い、その家への侵入をためらうはずです。
マーコールはヤギの一種ですが、体長は大きいものでなんと2m弱もあり、ヤギの中ではかなりでかい部類に入ります。
この大きさだけでも十分イヌよりも良い仕事をしそうですが、マーコールの真髄は、立ち姿の『神々しさ』にあります。巻き巻きの角とスカーフのような首周りの豊富な毛並み、やや黒みがかった体毛は、神の使いと言われればそのまま信じてしまいそうです。そしてなにより、人間の言葉をしゃべりそうな感がものすごく強い。「マーコール?知らねぇけど関係ねぇや」と言って侵入してきた不審者に、「汝の欲すもの、それ則ち汝の心に或る也」などとそれらしいことを言って改心させそうな雰囲気です。
以上、2つ候補を挙げてみましたが、どちらが番アニマルに向いているでしょう。
個人的には、タスマニアデビル(デビル顔面ver)に番犬の仕事をさせると有能すぎて手に余るので、候補に挙げておいてなんですが、あまりおすすめできません。それに、平時は可愛いんですよね、こいつ。平時の姿はよちよち歩きの子熊を彷彿とさせます。もしこいつが出てきても、「おいおいなんだ可愛いな」などと言って渡したビーフジャーキーに食らいつかせていている間に、易々と侵入されてしまいそうです。
対してマーコールは、全身から異世界感を放っており、玄関にただ立っているだけで「こいつは只者ではない…」と思わせることが可能です。
というわけで、番犬の仕事にふさわしいのは、タスマニアデビルよりマーコールです。
以上、宜しくお願いします。